当クリニックでは、リウマチの基本薬として普及しているメトトレキサートという飲み薬だけでなく、
この薬で抑えきれない患者さんに使われるようになった、生物学的製剤やJAK阻害薬のご提案もしております。
これらの薬剤により従来、リウマチは症状を抑える治療が中心でしたが、今では生物学的製剤やJAK阻害剤によって多くの患者さんを寛解に導くことが可能になりました。
寛解とは薬を止めることはできませんが症状がなくなり、日常生活が無理なくできるようになった状態です。
メトトレキサート(MTX)は、世界中で最も広く使用されている関節リウマチ(RA)の治療薬です。
日本では1999年に承認され、RA治療薬として使用できるようになりました。
高い有効性、継続率、骨破壊進行抑制効果や、生活の質(Quality of Life: QOL)、生命予後(寿命)の改善効果が示され、関節リウマチ治療の第一選択薬(診断されたらはじめに使用する薬)、アンカー薬剤(中心的役割を担う薬)となっています。
しかし、もともと肺の病気があったり、腎臓や肝臓の機能が悪いとMTXを使用できないこともあるため、使用前には十分な検査が必要です。
生物学的製剤とは、バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療のために使われます。生物学的製剤は高分子の蛋白質であり、内服すると消化されてしまうため、点滴あるいは皮下注射で投与します。バイオあるいはバイオ製剤とも呼ばれます。
特定の分子を標的とした生物学的製剤は、一般的に治療効果が高く、また併用するステロイド内服量を減らせることも多いです。ただ、必ずしも全員に効果があるわけではなく、また各生物学的製剤が有効かどうかを事前に推測することは難しいです。
薬剤ごとに特徴があるため、血液検査結果、合併症の有無、点滴製剤か皮下注射製剤かなど、様々な点を考慮して患者さんにとって最適な薬剤を選択する必要があります。
JAK阻害薬は炎症性サイトカインによる刺激が細胞内に伝達されるときに必要なJAK(Janus kinase(ヤヌスキナーゼ)の略称)という酵素を阻害する、内服のお薬です。
関節リウマチに対するJAK阻害薬の効果は、生物学的製剤とほぼ同等かそれ以上といわれています。
日本では、2013年3月にゼルヤンツ®(一般名トファシチニブ)が承認され、2020年10月15日現在、オルミエント®(一般名バリシチニブ)、スマイラフ®(一般名ペフィシチニブ)、リンヴォック®(一般名ウパダシチニブ)、ジセレカ®(一般名フィルゴチニブ)と合わせ、計5種類が承認されています。
いずれもメトトレキサートなどの他の抗リウマチ薬による治療で効果が不十分な場合に使用されます。
どんなに素晴らしい治療が登場してもリウマチは早期発見・治療が大前提。
早く発見できれば従来の治療でも改善の余地は大いにあると考えています。
それでも不十分な人には、生物学的製剤やJAK阻害薬といった先端の治療をご提案しています。
一方でこれらの薬剤による副作用や感染症などには注意が必要です。
内科医、看護師、薬剤師がチームとなり、より良い治療の提供をめざします。