呼吸器症状には咳や喀痰、喘鳴、息切れ、胸痛があります。原因は様々で、風邪や気管支炎、肺炎、結核などの感染症や気管支喘息、花粉症などのアレルギー、喫煙による慢性閉塞性肺疾患(COPD)、 間質性肺炎などの自己免疫性疾患、肺癌などの腫瘍性疾患、そして気胸や胸水が挙げられます。このような症状が続く際は、お気軽にご相談ください。また、タバコを止めたい、いびきや昼間の眠気が気になる方は当院の禁煙外来や睡眠時無呼吸外来を是非ご利用ください。
軽い症状でもご注意下さい
咳など風邪かもしれないと思う程度の症状でも、アレルギーやがん、重い感染症、自己免疫疾患などが隠れている可能性があります。
2週間以上症状が治らない場合はぜひ一度ご相談ください。
呼吸器以外に原因がある疾患でも、整形外科や循環器内科と連携して治療方法をご提案いたします。
咳にはいろいろな原因があります。
①後鼻漏
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、アデノイド(咽頭扁桃)などの原因で、粘液が鼻腔や咽頭で産生され咽頭、喉頭に流れて貯留します。喀痰を排出するため咳反射が生じます。朝に多い傾向があります。
②咳喘息
慢性的な咳反射です。喀痰を伴わない咳、突発的な咳、会話中の咳、寒暖差の咳、緊張時に咳等が特徴です。
喀痰、喘鳴、息切れを伴うことはありませんが、花粉症合併の人や女性に多く、また朝、夜間に多い傾向があります。
③アトピー咳
夜間や早朝に多く、会話や寒暖差、運動などで誘発されます。咳喘息と似ていますが、アトピー体質の人、アレルギーの家族歴がある人、中年女性に多い傾向があります。
また、喉のムズムズする感じを自覚したり、気管支拡張剤の効果がないことが多いです。
④気管支喘息
喀痰、喘鳴を伴う咳です。気道狭窄が生じているため低酸素血症、息切れを伴うことがあります。
⑤逆流性食道炎
胃酸過多や食道ヘルニアのため胃酸が食道を介して逆流し、咳反射が生じます。
⑥間質性肺炎
間質性肺炎は喀痰を伴わない激しい咳が特徴です。薬を飲んでもなかなか咳が止まらない場合にはレントゲン撮影が必要な場合があります。
⑦ウイルス感染後の咳
新型コロナウイルスやインフルエンザなどのウイルス感染後に発熱や咽頭痛、鼻汁が消失しても咳のみが遷延することがあります。咳止めをのんでも効果がない場合には、末梢性の鎮咳薬が必要になりますので、後遺症になる前に受診してください。
⑧上記以外の原因
マイコプラズマ菌やレジオネラ菌、ウイルス感染による非定型肺炎、肺がん、肺結核症、咽頭喉頭疾患が鑑別になります。慢性的に咳が持続するときは、レントゲンやCT検査、耳鼻科咽喉科受診が大切な場合もあります。
咳が止まらない原因は様々で、上記に挙げた原因が一つでないこともあります。
咳止めで治らない時は、早めの受診をおすすめします。
①COPD(慢性気管支炎、肺気腫)
習慣的な喫煙の影響により気管支と肺胞という組織に炎症が生じ、気管支が狭くなったり(慢性気管支炎)、酸素を吸収する肺胞が崩壊する(肺気腫)疾患です。そのため、のどに痰がたまる症状から、次第にヒューヒュー、ゼイゼイの呼吸と息切れが出現します。肺胞の破壊は元に戻らないことが多く、酸素を吸収できないため血液中の酸素飽和濃度が低下します。経年的に呼吸困難が増えて生活に支障をきたします。喫煙期間が長いほど肺胞の崩壊は広範囲に及びます。よって、この肺胞の崩壊によって起こる肺機能の低下が認められる前に禁煙、治療することが大切です。
また、喫煙は肺がんや呼吸不全、骨粗鬆症、糖尿病、高血圧、脳心臓血管障害の危険因子です。
レントゲン、血液中の酸素飽和濃度測定、肺機能検査(肺活量などを測定)
禁煙
自覚症状がなくとも肺活量を測定すると低い人がいます。今は症状なくとも、禁煙できなければ5年後、10年後に症状がでてくるかもしれません。なかなか個人で禁煙できない時は当院で禁煙外来を行なっております。
ぜひご利用ください。
気管支拡張剤の吸入療法
症状がなくとも検査で肺機能の数値が低い人は、早朝に治療を開始することを勧めます。霧状のスプレーや粉状のパウダー吸入薬を自宅で1日1ー2回吸入します。気管支を拡張させることで肺機能と自覚症状を改善させます。
当院では吸入指導も行っています。
在宅酸素療法
慢性的な息切れが持続すると呼吸筋の萎縮が生じます。慢性呼吸不全の状態です。安静時に酸素濃度は正常範囲でも、体動にて酸素濃度は低下します。当院では在宅酸素の導入を行っています。早朝に導入してねたきりにならないことを目指します。保険診療対象です。お気軽にご相談ください。
呼吸リハビリ/食事指導
肺気腫の人は慢性的な酸素不足状態のため、筋肉萎縮に陥り全身の筋肉量の低下がみられます。呼吸器筋も萎縮し呼吸に莫大なカロリーを消費します。いくら食べても痩せていく現象が見られます。治療は呼吸筋のリハビリと高たんぱく、高カロリー食が大切です。当院では呼吸リハビリを勧めています。
②間質性肺炎
肺を構成する間質という組織に炎症が起こる肺炎です。
本来、細菌やウイルスを排除する白血球や抗体が間質で炎症を起こします。半分以上は原因不明ですが、リウマチや膠原病、薬剤、ウイルス、カビ、塵肺等が原因のことがあります。急性と慢性型があり、乾性咳嗽や息切れ、発熱、低酸素血症が見られます。レントゲンでは陰影が見えないことがあり、診断が遅れることがあります。
聴診や問診が大切です。慢性型では肺が肝硬変のように硬く萎縮し、慢性呼吸不全に陥ることがあります。
レントゲン、血液検査、血液中の酸素飽和濃度測定、胸部CT、気管支内視鏡検査
陰影が軽度であれば、咳止めなどの対称療法で経過観察します。
抗炎症剤の投与
炎症を抑えるステロイドの内服や点滴、免疫抑制剤の併用を行います。
抗線維化薬の投与
慢性型で肺が萎縮して硬くなる現象を抑制する薬です。肺機能低下の進行や間質性肺炎の急性増悪を抑制します。
在宅酸素療法の導入
低酸素血症が持続する場合、在宅酸素を導入します。
鼻やのど、気管支に細菌やウイルスが感染したり、異物や抗原が侵入し免疫アレルギー反応を起こすときに粘液性の喀痰が一過性、または慢性的に産生されます。
①副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎
感染やアレルギーにより鼻腔や副鼻腔で炎症が生じ、粘液が咽頭や喉頭に流れてきます。
喀痰となりのどに停滞します。
②急性咽頭炎、気管支炎
細菌やウイルス感染で粘液喀痰が産生、一時的に貯留します。咽頭痛や発熱、咳を伴います。
③気管支拡張症
気管支の収縮機能が低下し、慢性的に喀痰が貯留しやすくなります。
肺非結核性抗酸菌症など慢性気道感染症やリウマチなどの自己免疫疾患等でみられます。
④慢性気管支炎
喫煙により慢性的に粘性喀痰が産生、貯留します。
⑤気管支喘息
咳喘息を放置すると、気管支喘息に移行し喀痰産生が亢進します。
①睡眠時無呼吸症候群
いびきや夜間中途覚醒、昼間の眠気、起床時のだるさや頭痛は、睡眠時無呼吸症候群が原因のことがあります。
睡眠時に呼吸が一時的に止まったり、浅くなったりして低酸素血症に陥る状態です。睡眠時に鼻と口からのどにいたる気道が狭くなるためにおこる現象です。
当院では診断のために外来で簡易検査(アプノモニター)を行っています。携帯型のモニターを自宅に持ち帰り、睡眠時の無呼吸回数を計測します。
診断後は治療としてCPAP療法(鼻マスク療法)を導入しています。保険診療です。睡眠時無呼吸症候群は高血圧症や脂質異常症、糖尿病の重症化因子です。CPAP療法にてこれらが軽快する場合があります。
症状が気がかりな方はお気軽にご相談ください。
②在宅酸素療法
肺気腫や間質性肺炎、肺がん等の原因により慢性的に息切れがみられ、生活に支障がある場合に在宅酸素療法は有効です。自宅で使う酸素濃縮器と外出用の携帯酸素器を保険診療でレンタルできます。(月1回の通院)
在宅酸素療法には適応基準がありますので、ご相談ください。
③禁煙外来
喫煙は肺がんや肺気腫、心筋梗塞、脳梗塞等の一因子です。
当院では禁煙を勧めており、ニコチン含有の貼付剤による禁煙外来を行っております。禁煙外来は年1回利用できる保険療法です。(1回の利用につき、5回の通院)
貼付剤を8週間貼って、その間に禁煙指導を行います。禁煙による離脱症状が軽く済むことがメリットです。
新型コロナウイルスが流行し、いわゆるコロナ禍に突入以降、浴連菌やプール熱、
ヘルパンギーナやインフルエンザ、RSウイルス等の様々な感染症が流行しました。
しかし、発熱や咽頭痛、鼻汁などの症状がおさまった後も咳や喀痰、
息切れが遷延するケースが増えています。
また、最近の気温や気圧の著しい変化による気候変動や花粉増加が原因となり、
今までアレルギーがなかった人にも咳、喀痰が増えている印象です。
症状がみられる方は是非ご相談ください。
また、風邪や肺炎、さらに肺気腫や間質性肺炎、気管支喘息、肺非結核性抗酸菌症、
肺がん、睡眠時無呼吸症候群、在宅酸素療法、禁煙外来など、
気がかりなことがございましたらいつでもご相談ください。
日本呼吸器学会認定
呼吸器専門医・指導医
医師 飯干 宏俊
咳など風邪かもしれないと思う程度の症状でも、アレルギーやがん、重い感染症、自己免疫疾患などが隠れている可能性があります。
2週間以上症状が治らない場合はぜひ一度お気軽にご相談いただければと思います。